1983年(昭和58年) 2月28日(月曜日)
厳しい寒さがこのところ続いたが、もう目の前に春がやって来た。「ロボットが刻む愛の言葉」とはやされた我が社のロボットも、今年はキャラクター・チョコレートの製造に活躍して、バレンタインデーには大いに注目を浴びた。
「感字世代 テレビ 漫画に育てられ」と時事川柳にあるように、青少年(10-24歳)の64%が「漫才やギャグ、コント番組の真似をした」ことがあり、53%が「アイドル歌手のまねをした」ことがあると答えた。また、ドラえもんやアラレちゃんなどの「キャラクター商品を買った」ことがあるものは38%もあり、テレビの影響力にびっくりする次第である。
消費者のニーズの多様化んい合わせた多様生産時代(FMS)を反映して、個性豊かなキャラクター商品の洪水である。まさにフィーリング世代には、じっくりと感性をとぎすましている時間的余裕はないのかも知れない。
「民放のコマーシャル トイレの時間あり」とよまれているように、15分ごとのコマーシャルが、テレビ番組に投入している時の息抜きであり、用をたすクォータータイムなのである。関学の置塩就職部長が「このごろの大学生は持続力がなく、15分か20分でソワソワ、モジモジする。これはテレビっ子の典型だ…」と言っておられる。今さらテレビの功罪を論ずるつもりはないが、「集中力の欠如と、行動が受身になる」ことはたしかのようである。
成熟化した管理社会の中にあって、新システム、巨大システムが次々に導入されてくる。ロボット、コンピューターが人間領域の仕事を素早く、的確に処理してゆく。その中にあって、人間のみに固有な能力がかえってコンピューターレベルに引き下げられ、退化するおそれさえある。そこで創造性、多様性、総合化、連想、要約、抽象化など人間固有の精神能力を高めるために、受動的、定型的セットメニューを排し、今こそ複雑な問題処理能力を充実させるべきである。
(慎三)