昭和62年(1987年) 12月5日 土曜日
師走、忘年会シーズンである。最近の酒席につきものが、カラオケである。このカラオケセットが、全国に昨年四十七万台売れている。カラオケ産業も百七十億円市場となり、CD(コンパクト/・ディスク)LD(レーザーディスク)化とともにハイテク化、高級化し、日本人の感性にフィットして、“一億総カラオケ人口”である。
カラオケ教室、カラオケ道場ができ、音感を高め、マイクの使い方がうまくなり度胸をつけるとともに、海外にまでカラオケバーは広がり、「日本人の行く所、カラオケあり」といえるほどである。マイナー(短調)な演歌に日本人の気質が象徴的に表れており、「カラオケ文化」とも言えるのである。
映像によるコミュニケーション
科学万博をはじめ、最近の博覧会のパビリオンは映像メディア花ざかりである。イラスト一枚は活字四百字分の訴求力があり、モノクロ写真は文字の百倍、カラー写真は四百倍といわれている。マンガ世代の新人類の「活字離れ」が理解できるような気がする。
一方、絵と図で伝達を早め、十五分間で情報をキャッチアップするレスポンスタイム(応答時間)の早さがビジネス社会では要求されている。工業生産に於ける熟練工は非熟練工の三倍の生産性といわれるが、知的生産力における熟練度は三十六倍である。この知的生産性はコミュニケーション(情報伝達)と、人間の能力そのものにかかわっているのである。アラブの諺に「百度の手紙より一度の握手、百度の握手より一度の食事」というのがある。人と人との出会いの情報密度は一番高く、一万倍ということになる。朝日ビールの樋口社長は重要指示事項は、電話、書面のみにとどまらず、必ず会って伝えるという。クライスラー社の「グッド コミュニケーション クイック レスポンス」、即ち「良く知って、良く知らせ、すぐやる」が大事なのである。
酒もファッション感覚で
「酒は百薬の長」であり、「気狂い水」である。又「酒は飲んでも、飲まれるな」である。無理強い、一気飲みや、振舞い酒のガブ飲みなどはオールドファッションである。自前の酒をマイペースで、そしていろいろな酒と多彩な飲み方を試してみる。まさに酒も多様化、ファッション化時代である。
甘えと寛容の酒席
社員が忘年会を嫌がる理由に①上司に気を使う(無礼講でない)②カラオケを歌わされる(カラオケ公害、好きな人だけ歌えば)③悪酔いする人にからまれる④金がいる(たかが五千円位だが)⑤酒の無理強い(自己流で飲みたい)などがある。忘年会は一年のストレスの解消の場である。楽しいものにしたいものである。
「芸は身を助ける」という、無芸大食より、普段にない自分の発見と、交流こそ大事寺る。酒にも、カラオケにもマナーがある。日本では昔から「酒の上の出来事」として、酒席での失敗に寛容で、又甘えもある。いい人間関係樹立のための「グッド 飲みニケーション」に乾杯。
北浦慎三
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