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2012年10月24日水曜日

グッド飲みニケーション


昭和62年(1987年)  12月5日 土曜日


 師走、忘年会シーズンである。最近の酒席につきものが、カラオケである。このカラオケセットが、全国に昨年四十七万台売れている。カラオケ産業も百七十億円市場となり、CD(コンパクト/・ディスク)LD(レーザーディスク)化とともにハイテク化、高級化し、日本人の感性にフィットして、“一億総カラオケ人口”である。
 カラオケ教室、カラオケ道場ができ、音感を高め、マイクの使い方がうまくなり度胸をつけるとともに、海外にまでカラオケバーは広がり、「日本人の行く所、カラオケあり」といえるほどである。マイナー(短調)な演歌に日本人の気質が象徴的に表れており、「カラオケ文化」とも言えるのである。

映像によるコミュニケーション
 科学万博をはじめ、最近の博覧会のパビリオンは映像メディア花ざかりである。イラスト一枚は活字四百字分の訴求力があり、モノクロ写真は文字の百倍、カラー写真は四百倍といわれている。マンガ世代の新人類の「活字離れ」が理解できるような気がする。
 一方、絵と図で伝達を早め、十五分間で情報をキャッチアップするレスポンスタイム(応答時間)の早さがビジネス社会では要求されている。工業生産に於ける熟練工は非熟練工の三倍の生産性といわれるが、知的生産力における熟練度は三十六倍である。この知的生産性はコミュニケーション(情報伝達)と、人間の能力そのものにかかわっているのである。アラブの諺に「百度の手紙より一度の握手、百度の握手より一度の食事」というのがある。人と人との出会いの情報密度は一番高く、一万倍ということになる。朝日ビールの樋口社長は重要指示事項は、電話、書面のみにとどまらず、必ず会って伝えるという。クライスラー社の「グッド コミュニケーション クイック レスポンス」、即ち「良く知って、良く知らせ、すぐやる」が大事なのである。

酒もファッション感覚で
 「酒は百薬の長」であり、「気狂い水」である。又「酒は飲んでも、飲まれるな」である。無理強い、一気飲みや、振舞い酒のガブ飲みなどはオールドファッションである。自前の酒をマイペースで、そしていろいろな酒と多彩な飲み方を試してみる。まさに酒も多様化、ファッション化時代である。

甘えと寛容の酒席
社員が忘年会を嫌がる理由に①上司に気を使う(無礼講でない)②カラオケを歌わされる(カラオケ公害、好きな人だけ歌えば)③悪酔いする人にからまれる④金がいる(たかが五千円位だが)⑤酒の無理強い(自己流で飲みたい)などがある。忘年会は一年のストレスの解消の場である。楽しいものにしたいものである。

 「芸は身を助ける」という、無芸大食より、普段にない自分の発見と、交流こそ大事寺る。酒にも、カラオケにもマナーがある。日本では昔から「酒の上の出来事」として、酒席での失敗に寛容で、又甘えもある。いい人間関係樹立のための「グッド 飲みニケーション」に乾杯。
北浦慎三

2012年10月5日金曜日

調達物流で輸送システム化


昭和62年(1987年) 10月5日 月曜日


 鳴り物入りの「秋の全国交通安全運動」も終った。全国の運転免許所有者五千五百万人、自動車保有台数五千万台、本格的車社会である。
 従来の取締りや、安全施設の整備、運転技術の向上などだけでは交通事故は減らない。

「まあええ」は「迷惑」でっせその駐車
 大阪市内の瞬間駐車台数は二十一万台、府下全域での年間駐車違反件数二十七万台である。経済活動の拡大とともに、当然、物の動きは活発になる。やたらと荷物、人を乗せ、トラック、乗用車、単車が街中を走り廻る。いきおい駐車違反が増加し、狭い道路をより不便にしている。一台が違法駐車すれば、「赤信号みんなで渡ればこわくない」式の車の続出で、手のつけようがない。
 そこで、「違法路上駐車を追放しよう」と立ち上がったのが、東区松屋町周辺の九町会で、地区内の全車両にコード表示したステッカーを貼付するというユニークなもの。各町会担当者が車両台帳をもち、違法駐車を見つけ次第報告する。他地域からの進入車も同様巡回警告する自主的な地区内の駐車管理を行うもの。大阪は安全マインドが不足、交通マナーが低い、といわれる中にあって新手の防衛策といえる。

四兆円の損失
 都心をはじめ、日本の道路は色々な障害があって車がスムーズに走れない。
 自動車の全国平均時速は時速三十六キロで年間総走行時間は百四十億時間。一台、一時間当りで人件費など三千円の費用がかかるとして、年間総費用は四十二兆円に達すると試算されている。平均走行速度が四十キロにアップすると、総走行時間が一割減るため、年間四兆円の費用が浮くという。新関西国際空港四つ分のお金に相当する。
 安全、安心、快適の三側面から道路の質を検討し、バイパス、立体交差化、道路照明、駐車場の整備などにより、渋滞が解消すれば、大きな経済インパクトがあるのである。

調達物流の総合メリット
 「五・十払い」の集金用車両。問屋街の配送車など問題は多いが、向上でも納入資材、製品出荷の^車両でごった返ししている。その中にあって、各協力工場から、それぞれのトラックでの納入形態をやめ、定時定量を一台の車が巡回集荷し、直接工場にコンベアの端末に納入する「調達物流」を考えついた。摂津市のタイヨー運輸はさらに拡大して、顧客のニーズに合わせ、配送センターで、部品の組立(ユニット化)などで総合的付加価値を高めている。この様に多品種小ロットの各協力工場からの納入車の無駄が省け、得意先は業者の車で混雑することなく、相方共トータルコストを下げることが出来たのである。
 輸送が単に物の場所を移すことから、物流による価値の創造を目ざすと共に、地域エゴ、ドライバーエゴ、会社エゴを捨てさり、輸送をシステムとして考え、「機能の衣がえ」をしてゆく必要があるのではなかろうか。
北浦慎三

2012年9月21日金曜日

中小企業こそ「リスク管理」

昭和62年(1987年) 9月5日 (土曜日)



夏休み明け、グループ企業の責任者が、駆け込んで来た。取引先の倒産で、「三千万円の債権が、回収不能、一ヶ月の売上高に相当する」と青くなっている。景気回復期こそ、倒産多発の危険信号である。

災害は忘れた頃に
チェルノブイリ原発事故、三井物産マニラ支店長誘拐事件、三菱銀行三億円強盗事件、西川ふとん事件、そして古くはグリコ森永事件と、ふりかえってみると国も企業も家庭も個人も、様々な事故や事件に遭遇している。台風、雷、地震、豪雨、異常気象などの自然系リスク。盗難、侵入、デマ、パニック、スキャンダル、殺人、心臓病などの人間系リスク。火事、爆発、自動車、海運、航空機事故、公害、労働災害、製品欠陥、コンピュータ犯罪などの人工系リスク。これらを経営要素(人、物、金、情報、戦略)毎に分類してみると百近いアイテムが集まった。我々はリスクの渦中にあり、まさに「危機の時代」に立たされている。諸々の事故を対岸の火災化し、「喉元すぎれば熱さを忘れる」でいいのか、「災害は忘れた頃にやって来る」のである。

リスクの9割は人災
リスクの大部分はヒューマンエラーから生ずる。「人間は失敗をおかす動物である」しかしそのトリガー(引き金)を引かさないために、リスクマネージメント(危機管理)が必要である。リスク管理の最重要課題は倒産と社内犯罪(詐欺、横領、使い込み、持ち逃げ、中傷、誤報など)である。一方消費者から企業が訴えられるケースも多い。即ちPL(製造物賠償責任)とD&OL(重役責任)である。アメリカでは保険危機をひき起こし、PL保険など5・6倍のプレミアムである。

危機回避のシステム
大阪府経営合理化協会では「異業種経営者異脳専門家交流会」の中にリスクマネージメント専門委員会を設け、今年は「リスク管理」ハンドブックのパートⅠとして「倒産」を取り上げている。AI(人工知能)による「エキスパートシステム」(日本生命)や、倒産分岐点活用法などいろいろあるが、このハンドブックでは、中小企業向けの、チェックシート中心の簡便な、診断と対策表でまとめ、会員企業に役立ててもらいたいといっている。これで予兆を知り、予防保全策を打つべきである。

目指せ「リスキアン」
リスク管理とは「経営体の諸活動に及ぼすリスクの悪影響から、最小のコストで、資産、活動、稼働力を保護するため、必要な機能ならびに技法を計画、組織化、スタッフ化、指揮化、統制化するプロセスである」といわれている。アメリカでは七千人からなるリスクマネージャーの団体もある。日本では「水と安全はただ」という安易さから、活動は未だ低調である。
しかしリスクを未然に防ぎ、もし事件や事故が発生した場合、少ない費用で、最も効率よく処置する「リスキアン」(危機管理者をこう呼びたい)がいれば、企業の成長、繁栄のサバイバルに、的確に対処してゆくことが出来るのである。
北浦慎三

2012年9月14日金曜日

NICSはライバルかパートナーか


昭和62年(1987)年 8月5日 水曜日

 吹田の中小企業の(株)旭電機製作所は電子機器メーカーだが、最近商品化戦略の多角化の一環として、台湾から幼児用モトクロス型自転車を輸入した。国産品に比べ半値という安さもあって、すでに三千台以上を売りさばいている。川鉄商事が韓国製の木工家具を、いすずがトラック用バッテリーを、トヨタ車体が台湾からプレス部品を購入、などの報道は枚挙にいとまがない。

NICSから「開発輸入」
 円高、貿易摩擦、それに伴う政府の輸入促進策を背景に百貨店、スーパーなど流通業界でアジアNICS(新工業国群)からの直接輸入(開発輸入)が増えている。海外商品共同仕入れ会社「アイク」や、タイ製の商品を扱う専門店「タイホニック・タイランド」(そごう系全国十三店)などアジアで“ヒット商品”探しに懸命である。日本人の胴長短足の体型、甲高、幅広の足型、色、柄等の好みなど、「日本向けはめんどうだ」と、敬遠したり、日本を特殊な市場とする見方も根強い。それが「非関税障壁」とも受取られかねない。しかし、手間をかける日本製の良さがようやく理解され、「日本の業者と付き合うことで、商品開発のノウハウを吸収し、力をつけた」と喜んでいる向きも多い。

相互補完の輸入戦略
 地域的に見ると、アメリカ/中南米、欧州/中近東アフリカ、日本/東南アジアがその地域特性から来る相互補完関係。産業特性、技術特性を生かした分業体制が今後のグローバリゼーション(世界化)に非常に重要である。日本とNICS(韓国、台湾、ホンコン、シンガポール)、ASEAN-4(フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア)は先進国、中進国、途上国という風に雁行的経済発展をとげて来た。それはハード面では、繊維、軽工業品→鉄工、造船→自動車、電子機器とグレードアップし、日本を追い上げ、遂にライバル視するのである。一方ソフト面では東南アジアの言語圏、文化圏から来る、ソフトの文化性、例えばワープロの漢字など、域内では普遍性、共通性があり、有利に相互補完の実をあげることができる。

ローカルから国際ルールへ
 特許、商標などの知的所有権保護の強化が叫ばれている。模倣による技術習得というNICSの過去のパターンから、独自の創造性豊かな商品開発が望まれる。国内のローカルルールから、いち早く国際的尺度、規範で物事を判断すべきである。もはや、半導体、ファッション製品をはじめ単なる「国産品」ではダメで、真に世界に通用し、探し求められる「国際品」でなければならない。又アジアNICSが、ただ日本企業の垂直下請的、部品の供給基地化したり、地場産業による軽工業性雑貨製品の輸出に終始することなく、水平的補完契約の立場で、良きパートナーとしての務めを果す必要がある。今まで、二国間での競争や協調関係中心だったが、いよいよ両国企業が協力して第三国で新しいビジネスを始める時代が到来したのである。
北浦慎三

2012年9月10日月曜日

ハイテクのハイ利用で廃テク防止


昭和62年(1987年) 6月5日 金曜日


 国際経済摩擦の激化に伴って、わが国の企業は国際協調型への構造変換を強く求められている。激しい環境変化に対応して、企業規模の大小にかかわらず、自らの進路を点検、新たな起動を敷設する必要に迫られているわけで、とくにNICSの追い上げなどもあって、中小企業での緊急度は強いといえる。

陳腐化速いハイテク
 ハイテク時代の特長は①変化のテンポが速い②原理、方法が変わる③無関係の分野もまきこまれる④失うもの、得るもの両方がある-といわれている。特に半導体では、超LSIは二十年前の真空管の十万倍の信頼性、それに反比例して大きさは十万分の一、価格も十万分の一である。「五年経てばクギと同じ値段」といわれるゆえんである。また、指数関数的向上をしているVLSI(半導体集積回路)はその性能や集積度が、大体二年おきに倍増している。新製品の陳腐化速度はすさまじい勢いで、「廃テク商品」化しているのである。

ハイテク御三家の利用
 ハイテクの注目株は、マイクロエレクトロニクス(ME)、新素材、バイオテクノロジーで「ハイテク御三家」とさえいわれる、しかし世間でさわがれるほど成長性、採算性は良くない。MEの代表格の産業用ロボットも、昨年二千七百億円で、みそ産業の三千億円に及ばない。みそもロボットも一緒にする訳ではないが、IC産業の一兆七千億円はきもの産業の二兆円より少なく、新素材の七千億円は食パン産業の八千億円には満たない。しかしハイテクを利用し、自社の製品やプロセスに取りこむ「ハイテク化商品」、特に電子デバイスを組みこんだメカトロニクスの市場規模は二十五兆円で、今後も成長を約束される市場である。
 
組み合わせ技術と使う技術
 古くは消しゴム付き鉛筆から「ラジカセ」「バルセットシリンダ」(切換バルブをつけたアクチュエータ))など組合せ商品は枚挙にいとまがない。「元気の出る針金」と、マスコミをわかせた「形状記憶合金」も二十五度以上になると、記憶したふっくらとした胸元を再現するブラジャーで、下着に革新をもたらし、二百万着を売るヒット商品となった。ハイテクを「作る技術」よりも「使う技術」、即ちソフトウェアこそが、中小企業にとって有効に作用するのである。

単体生産からシステム化へ
 私はかねがね「付加価値生産性は部品点数に比例する」といっている。同じアルミ製品でも、サッシの生産より航空機が有利に決まっている。これから水平的国際協業時代に突入すると、部品点数五千点以上のミシン、トランジスタラジオなどは中進国へ移し、日本はもっぱら五千点以上のカラーテレビ、VTR、三万点以上の自動車、なかんずく五万点以上の中・高級車を生産することに専念せざるをえないのである。また、単品即ちコンポーネント・マシンを作るステップから、ソフト、ノウハウなどの知的付加価値を装備した、大型コンピュータ(二十万点)、人工衛星(五百万点)などの高次なシステム商品へとシフトする必要を痛感するのである。
北浦慎三

2012年9月7日金曜日

ストレス社会こそ「ゆとりの構造」


昭和62年(1987年) 5月5日 火曜日



 春のゴールデンウィークの連休明けである。陽焼けした若者たちの歓声があちらこちで聞こえる。

小型、こま切れ的レジャー
 余暇開発センターの「レジャー白書」によれば、男性の場合、今後やってみたい余暇活動の第一位は避暑、避寒、温泉などの国内観光で、七三%。第二位がドライブ五四%、第三位外食五〇%、第四位海外旅行四八%、である。しかし「時間的余裕がない」(四〇%)や「経済的余裕がない」(二五%)で、宿泊観光旅行に行けなかった理由としている。
 中小企業の福利厚生施策の中で、断然人気の高いのが、この旅行で、他のレジャーを圧倒している。ところで、日本人のレジャー活動は小型、こま切れ的で、多彩と言えるが、欧米に比して、日常的、都会的である。観光レジャーにも共通しており、最近はゴルフ、テニス、スキー客が増えているが、遊びそのものに余裕がなさすぎる感がある。

余暇にも生産性?
 働きバチ、ワーカーホリック(仕事中毒)と海外から日本のビジネスマンは避難されながらも、ゴールデンウィーク、夏休み、正月はまさに“民族大移動”の旅行の集中するシーズンである。欧米では長期休暇は常識化している。バケーション、即ち頭をベーカント(空っぽ)にして、短くて一週間、長くなると一ヶ月滞在の、滞在型リゾートが定着している。交替で休暇を取ることを法制化している国さえある。日本では人が働いている時に、自分だけ休暇をとること罪悪視し、レジャーを浪費ときめつけ、上司、同僚、部下に気を配りながら、遠慮して休暇を取らないのである。総じて「レジャー下手」「遊び下手」である。民族性の違いとはいえ、明日の英気を養うという点では、レジャーにも生産性があるといえるのではなかろうか。

ストレス社会 心はプアー
 全民労協の調査では、毎日の仕事の中で、「精神的にきつい」「運動、レクリエーションのゆとりがない」につづいて「人間関係からくるストレス」をあげている。体をあまり動かさず、頭だけを使うことが多く、そのうえ、食べ物豊富で、過食。成人病の増加が問題である。自覚症状がありながら、責任感と「出世の妨げ」と、自ら病気をひた隠しにして、無理をし、結果として、会社に迷惑をかけることに相成るのである。
 仕事不安(失業や職場への不適応)、家庭不安(子供の非行や進学難)、地域不安(近所に知らない人が増える)、健康不安など基本的な不安は各世代でかなり共通しているが、二十代は仲間集団内の人間関係に生き甲斐を求めながらも、人間関係の不安で苦慮しているのが目立つのである。ハードウェア即ち機械、設備たいかに立派でも、それを運転するソフト即ち管理、運営が貧弱ではダメである。そんな状態を「ハードリッチ ソフトプアー」と呼んでいる。「物はリッチでもストレス社会で、心はプアー」という感を深くするのである。そんな激変環境にこそ、余暇を見出す「ゆとりの構造」が余計に必要と思われる。
北浦慎三

2012年9月6日木曜日

モノ、人ともに”心の国際化”

昭和62年(1987年) 4月5日 日曜日

 昨年正月アメリカのミネアポリスからDATA CONTROL社の役員の娘さん、という二十歳の女子大生が我が家にやって来た。息子ばかり三人の中に降って涌いたような「ホームステイ」の国際化家庭版の一ヶ月であった。私に「夜遅く帰宅し、東奔西走の毎日は、うちのパパと一緒だ」と笑いこけていた。


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 中小企業の”人材輸出”
 今年早々、かって仲人をした、ある中小企業に勤務する四十五歳の工場の係長が、退職の挨拶にやって来た。ホンコンのプラスチック会社の役員として、三年契約で新天地に赴任するという。幸い中小企業診断士の資格を早くから取得しており、百万円の手取り月収、家つき、車つき、月一度の日本への出張つき、という恵まれた条件である。単なる製品にまつわる固有技術だけでなく、生産技術、管理技術のテクノロジートランスファ(技術移転)は、NICS(新興工業諸国)に対して、一匹狼の力とはいえ、"人材輸出"の懸橋といえるのではなかろうか。

日本的経営の理解
 中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、スリランカ、ネパール、メキシコ、ペルー、ケニアなどから、今年も三月上旬、国際協力事業団の一行十二名が「中小企業研修団」として我が社にやって来た。これは我が社の技術協力計画にもとづき、約三ヶ月間各地で研修するものである。工場見学の後、数時間のディスカッションをした。日本的な経営のバックグラウンドである、義理、人情、稟議書、根回し、行政指導、提案、改善、腹芸など多様な価値観はなかなか理解しにくいものであった。一方、職場の身近なラジオ体操、朝礼、給食、制服のように、集団主義、無層社会の象徴的行動は良く理解できたようである。
 特に「日本の中小企業経営の特長」として欧米のレイオフ(一時解雇)制度に対して、安定雇用性(終身雇用制ではない)、実力主義を加味した年功序列制、職種別労組に対して、企業別労組など要約して説明した。

日本企業の国際化
 このように家庭でも職場でも外国人との接触は多くなって来た。昨年の日本からの海外渡航者は約五百万人である。又、企業の海外進出に伴う「長期滞在者」は約二十四万人にのぼっている。経済力の発展に伴って、モノだけでなく、人の面でも国際化の時代を迎えている。

日本企業の国際化進展の段階は①輸出中心(モノ)②現地化(モノ+カネ)③国際化(モノ・カネ+ヒト)④多国籍化(モノ・カネ+ヒト+情報)⑤グローバル化(モノ・カネ・ヒト・情報+企業分化)だといわれている。
 これからの日本企業は中小企業といえども、海外進出にあたって経営理念や企業文化を完全に自分のものにしたうえで、現地に受け入れられる内容に翻訳し、現地社会の人々とコミュニケートできる真の国際人の育成が重要である。”郷に入れば郷に従え”である。異国に骨を埋める覚悟で、異文化を素直に理解できるような教育、情報の提供を通じて、モノ、ヒトと同時に”心の国際化”の時代を築き上げるべきである。
北浦慎三

2012年9月5日水曜日

"ゴールドカラー"時代の躾

昭和62年(1987年) 3月5日 木曜日


躾箸で基本機能
 桜の便りが各地から聞かれる。卒業式、謝恩会、卒業コンパ、入社式、新入社員歓迎パーティーと人前で食事をする機会が多い時期である。その中で気になるのがお箸のもち方で、ぎこちない使い方をみていると美人も台なしである。正しいお箸の使いこなしを幼児期から見につけさせるツールに「躾はし」というのがある。基本機能をしっかりと身につけ、学校給食の習慣と便利さだけでスプーンに依存する安易さから脱却すべきである。

 ME(マイクロエレクトロニクス)化時代、あらゆるものが、自動化されマニュアルにもとづくボタン操作だけになりつつある。デジタル化、ブラックボックス化が急速に進むなかにあって、たしかな手ごたえ、把む、切る、突きさすなどの多様なテクニックをもつお箸の生活技能は東洋人の特質ではないだろうか。

手と目の連動性
 手を器用に使いこなす職業人は長生きする、とよく言われる。文筆家、彫刻家、画家など、好きな事を一生の仕事として選べる人は幸せである。しかし大工、機会組立工、設計者などのように、高度な熟練を要し、そして「手と目と頭の連動性」による器用さを発揮しなければならない仕事もまた同様である。

 先年、摂津市などで開催された「国際技能オリンピック」は十八カ国の参加、三十四種目であった。金メダル十五で韓国が第一位、金メダル十一の日本は二位に凋落である。これはハミヨンテンダ精神(成せばなる)にもとづく韓国のガンバリズムもあるが、ME化時代にあっても在来型技能を中学卒の作業者に徹底して訓練した成果といえる。日本の技能者の高学歴化で、技能オリンピックの出場資格の二十歳では、高校卒業後二年間しかなく、習得不充分のそしりをまぬがれない。

スカイカラー化
 「私作る人」「あなた修理する人」といった、欧米の横断的職能別労組の考え方と異なり、、日本では中小企業の技術者にとどまらず、機械も電気もチェックするのである。また据付調整、試運転、、引渡し、それにマネージメントレベルの検収、現場の長への挨拶までして来る。単能工から多能工へ、そして技術者のニューエンジニア化で、ブルーとホワイトカラーの両方をこなすので「スカイカラー」とでも言うべきである。ME技術と、手作業のような基礎技能、つまり在来技能、その新旧混在型熟練というものが、真の時代に生きる「匠(たくみ)」と言うべきである。

プロのロボット教示
 塗装ロボットにティーチング(教示)した素人の回路でも確かに塗れた。しかしベテラン塗装工が教示すると塗料は五分の一で済んだ。またマルチプルパンチングプレスで異形の大小数十個の穴を開ける。経験者が穴あけ順序を組み立てると、効率よく、歪は全く出なかった。これら勘や経験を体得した高度な熟練技能者は、如何にME化時代になっても貴重な存在である。

 ハイテク時代の頭脳派ビジネスマンを、従来のホワイトカラー、ブルーカラーと区別して「ゴールドカラー」と名付けている。がっちり基本を躾けた輝かしいゴールドカラーを目指そうではないか。

北浦慎三

2012年9月4日火曜日

"チョコロボ"で愛のメッセージ

昭和62年(1987年) 2月5日 木曜日


「円高激震」下、厳冬の産業界である。その中にあって、今年もバレンタインデーがやって来る。二月十四日、キリスト教で、殉教した聖バレンタインの祭日。女性が男性に愛の告白ができる日とされている。6ケ。七ケ。九ケにプラス花二鉢と、三年連続上昇の私宛の「義理チョコ」も、プレゼントされて腹の立つものではない。心ひそかに期待に胸ふくらませ、こっそりと自分の机の引出しをあける楽しい日なのである。去年は、「部長」「課長」「係長」の表札ふうのチョコレートが良く売れたようである。「部下」の女子社員が「部長」と書いたチョコを課長の引出しに、しのばせる。翌日それを開いてニンマリする課長氏。その光景を遠目に、それとなく観察する当の贈り主たち。そこに男性の昇進願望とともに、女性社員とのほのぼのとしたコミュニケーションが窺える。

食品業界の売上げ総額二十七兆円、うち菓子業界二兆三千億円、うちチョコレート業界三千四百億円位とされている。この「バレンタイン歳時」の売上げは、年間販売高の10%以上で、日本人に直接関係のない宗教的行事のコマーシャリズムと一笑に付せない程のマーケットになっている。

OA、FA、SA、HA、と事務所、向上、商店、家庭にロボットが入り込んでゆく。しかし店員、販売面の自動化、ストアオートメーション(SA)については、機械、ロボットで代替できる部分は大いに導入するべきである。人間にしかできないふれあい、サービス、不測j事態の判断、意思決定のみを担当することにより、顧客への満足が増大するはずである。ハイテク時代こそ、よりハイ・ヒューマン・タッチが望まれるところである。

「ロボットが刻む愛の言葉」ともてはやされ、キャラクターチョコレートづくりに精出した「チョコロボ」が消費者の多様生産システムとして活躍している。「好きやねん」「私の愛うけとって」「パパ好きよ」「合格祈ってます」など、あらかじめティーチングしておいた十数種のーメッセージと、宛名、贈り主をハート型のチョコの上に、ロボットが黙々と書いてゆく。

食べるためのお菓子(ハードウェア)を送るだけではなく、心にふれる感性豊かなメッセージ(ソフトウェア)をプレゼントする時代である。二億六千万円と昨年のチョコ売上日本一を記録したキタの阪神百貨店の売り場の話では、チョコの種類は三千種、食べてもらうのは半分位で、情報伝達に価値があるといっている。

殆どのロボットが、そうであるように、発売当初から三分の一位に価格が引き下げられている。ロボット単体の導入から、タンク、圧送ポンプ、保温装置、データ入力装置などの周辺装置をすべてセットし、応用ソフトつきの一貫した装置として、ユーザーニーズに対応している。個性化、ソフト化時代の小売り、店頭の自動化、消費者と「プッツン」ではなく、マン・マシンに心を交わし合うメッセージであってほしいものである。
(太陽鉄工常務・日本産業用ロボット工業会関西支部長)
北浦慎三