1983年(昭和58年) 1月31日(月曜日)
日本の真冬、大寒にアセアンをはじめとする中小企業サミットと国際貿易投資コンベンションがはじめて大阪で開催された。投資セミナー、工場視察ツアー、業績別懇談会、個別商談会など新しいビジネスのチャンス、パートナーを求めて意義深いものであった。工場視察ツアーの中、9カ国、33人がロボット生産工場の見学に来社された。ロボットが「WELCOME」と筆で書いて歓迎し、その色紙を全員に持ち帰っていただき、大変喜んでもらった。
席上「日本の中小企業経営の特長」をスピーチした。欧米のレイオフ(一時解雇)制度に対して安定雇用制(終身雇用制ではない)、実力主義を加味した年功序列制、職場別労組に対して企業別労組など十数項目にわたってその特質にふれた。中でもボトムアップによる人間関係管理を中心とする参画、合意によるチームワーク重視の集団主義、すなわち「おみこし経営」については、理解してもらうのに相当時間を要した。
一方、サミットの討議の中に、マレーシアは「日本産業の高度化に伴い、付加価値が低くなった技術をどんどん移転してほしい」と要請、スリランカは「第三世界は先進国の中古機械の捨て場ではない」とも述べた。自国の工業基盤と技術蓄積、技術レベルに見合った技術移転が望まれているのではないか。
国際版「異業種交流プラザ」ともいえる「国際中小企業情報センター」や「中小企業大学校海外研修コース」の設立など、単なるお祭り騒ぎから中小企業を活性化させる複合的な施策が必要な時である。
サミット参加国はそれぞれ国情、特性があろうが、中小企業レベルでの新しい国際交流、国際協力によって、貿易摩擦のさなか「鎖国、繁栄の弧島、国際音痴」などの悪口を一掃し、真の国際社会への一員として心を通わせ、国際人脈作りに努力すべきである。
(慎三)