2012年10月29日月曜日

世界の街角で6 ウィーン 感動と潤いの「芸術の都」


ウィーンといえば、芸術の都、音楽の都、バロックの都、そして、森の都。何世紀もの間、ヨーロッパの政治、文化の中心であり、その栄光の歴史はハプスブルグ時代の建築物や、華麗な美術品からもうかがことができる。


「音楽の都」はモーツァルトづくし
ヨーロッパ大陸の中央に位置する永世中立国、オーストリアは古くから欧州の各都市を結ぶ交流点として栄えた。またその首都ウィーンは、東ヨーロッパのゲートウェイとしても重要な位置にある。
 今年はウィーンで活躍したモーツァルトの没後200周年にあたるとあって、モーツァルト記念切手、モーツァルトチョコ、モーツァルトリキュール、CD、カセット、レコード、ポスターと、街中モーツァルトづくめである。国際列車、観光船、音楽院に名前を冠するだけでなく、広場、橋、生家、墓、記念碑など枚挙にいとまがない。621曲を作曲し、36歳の若さで没した天才ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトは幸せ者である。

圧巻のブリューゲル
ウィーンの街には、壮麗な王宮、シェーンブルグ宮殿、ベルベデーレ宮殿などがあり、それぞれ宮廷馬車博物館、絵画館、バロック美術館、中世博物館などがその中にある。
 また国立オペラ座、楽友協会ホールなど音楽の都にふさわしい建造物も数多くある。
 その中でハプスブルグ家歴代の収集品を展示した、かつての宮廷美術館」の美術史館は見事である。ボッシュの「十字架を担うキリスト」、ルーベンスの「毛皮を被う夫人」、バンダイクの「夫人の肖像」、ベラスケスの「王女マルガリータ」、ラファエロの「草原の聖母子」、デューラーの「一万人の殉教」、その他レンブラント、ジョルジョーネなど7000点余りの絵画が、作者別に独立した部屋に展示されている。
 とりわけブリューゲルの「農民の婚宴」「バベルの塔」「農民の踊り」「雪の狩人」「ベツレヘムの幼児虐殺」など、その壮大なコレクションには圧倒され、まさに感銘の連続である。

ユーゲント・シュティール
美術家からの帰途、在ウィーン大使館の加治一等書記官に連れられ国立の絵画オークション(取引所)を訪れた。2,3点欲しい絵があったが、結構高いものであった。それにひきかえフローマルクト(のみの市)は、アンティークのコスチューム、絵画、家具などウィーン名物だけあって、一種の文化散策の場としても面白いところだった。
 世紀末の芸術アール・ヌーボーを、ドイツ語ではユーゲント・シュティールという.郵便貯金局、カールスプラッツ駅、マジョリカハウスなどオットー・ワーグナ設計の建物をまのあたりにした感動は別格である。
 文化の歴史と歴代権力者の収集の歴史はまるで違うとはいえ、日本にはない極めて高い質と、膨大な量の所蔵品や超弩級の目玉の作品を、館の売り物にできる西欧の博物館や美術館には、えもいわれぬ感銘と潤いを改めて覚えるのである。
北浦慎三
(大阪商工会議所異業種交流研究会コーディネータ)



2012年10月24日水曜日

グッド飲みニケーション


昭和62年(1987年)  12月5日 土曜日


 師走、忘年会シーズンである。最近の酒席につきものが、カラオケである。このカラオケセットが、全国に昨年四十七万台売れている。カラオケ産業も百七十億円市場となり、CD(コンパクト/・ディスク)LD(レーザーディスク)化とともにハイテク化、高級化し、日本人の感性にフィットして、“一億総カラオケ人口”である。
 カラオケ教室、カラオケ道場ができ、音感を高め、マイクの使い方がうまくなり度胸をつけるとともに、海外にまでカラオケバーは広がり、「日本人の行く所、カラオケあり」といえるほどである。マイナー(短調)な演歌に日本人の気質が象徴的に表れており、「カラオケ文化」とも言えるのである。

映像によるコミュニケーション
 科学万博をはじめ、最近の博覧会のパビリオンは映像メディア花ざかりである。イラスト一枚は活字四百字分の訴求力があり、モノクロ写真は文字の百倍、カラー写真は四百倍といわれている。マンガ世代の新人類の「活字離れ」が理解できるような気がする。
 一方、絵と図で伝達を早め、十五分間で情報をキャッチアップするレスポンスタイム(応答時間)の早さがビジネス社会では要求されている。工業生産に於ける熟練工は非熟練工の三倍の生産性といわれるが、知的生産力における熟練度は三十六倍である。この知的生産性はコミュニケーション(情報伝達)と、人間の能力そのものにかかわっているのである。アラブの諺に「百度の手紙より一度の握手、百度の握手より一度の食事」というのがある。人と人との出会いの情報密度は一番高く、一万倍ということになる。朝日ビールの樋口社長は重要指示事項は、電話、書面のみにとどまらず、必ず会って伝えるという。クライスラー社の「グッド コミュニケーション クイック レスポンス」、即ち「良く知って、良く知らせ、すぐやる」が大事なのである。

酒もファッション感覚で
 「酒は百薬の長」であり、「気狂い水」である。又「酒は飲んでも、飲まれるな」である。無理強い、一気飲みや、振舞い酒のガブ飲みなどはオールドファッションである。自前の酒をマイペースで、そしていろいろな酒と多彩な飲み方を試してみる。まさに酒も多様化、ファッション化時代である。

甘えと寛容の酒席
社員が忘年会を嫌がる理由に①上司に気を使う(無礼講でない)②カラオケを歌わされる(カラオケ公害、好きな人だけ歌えば)③悪酔いする人にからまれる④金がいる(たかが五千円位だが)⑤酒の無理強い(自己流で飲みたい)などがある。忘年会は一年のストレスの解消の場である。楽しいものにしたいものである。

 「芸は身を助ける」という、無芸大食より、普段にない自分の発見と、交流こそ大事寺る。酒にも、カラオケにもマナーがある。日本では昔から「酒の上の出来事」として、酒席での失敗に寛容で、又甘えもある。いい人間関係樹立のための「グッド 飲みニケーション」に乾杯。
北浦慎三

2012年10月23日火曜日

世界の街角で5 ベルリン 壁は壮大なギャラリー


東欧変革、ドイツ統一、そしてEC統合。「大欧州」への多元、寛容、自由の理念のもとに21世紀へベルリンは大きく動き出した。

「万国壁絵美術展」
4世紀半ぶりのベルリン訪問である。電波(衛星放送)がベルリンの壁を崩壊させた。激動の東欧民主化の大きな波がうねり、「壁」が崩れて1年半である。東欧冷戦の象徴であった残滓がベルリン市内から消えていくのに従い、全ヨーロッパ統合の新しい秩序づくりが急ピッチで進んでいる。
 東西ベルリンを隔てていた壁、役32キロの殆どが消滅した。ブランデンブルグ門周辺の風景も一変し、観光客が、どこに壁があったのか戸惑うほどである。しかし、ゲシュタポ本部のあったプリンツアルプレヒトゲレンデの壁200メートルを戦争記念に残すほか、「イーストサイドギャラリー」の名で新たな観光地となったシュプレー川沿いの旧東ベルリン・ミューレン通りの壁も残されるという。
 ここは世界各国の画家118人が約1.3キロの壁をキャンパス代わりに、自由、平和などをテーマに絵を描いた。「万国壁絵美術展」よろしく、風刺画あり、サイケ調あり、漫画ありで様々に描かれ、その大作、力作は東西対立の遺物として道ゆく人々に今も語りかけている。
 夕方と早朝の2度カメラを持って訪れたが、この壮大なオープンギャラリーを眺めていると、ドイツ統合への不安と期待、そして過去の支配者への嘲笑と建設への喜びが交錯しているように感じられるのである。

ベルリン美術館
 旧東ベルリンの国立近代美術館でナチスがフランス人から没収した後、行方の知れなかったルノワール、クールベなどの未公開絵画が見つかり、日本でもその様子が話題となった。
 また、世界の三大美術館といわれるベルリン美術館は旧東独のすさまじい経済崩壊のため、その復旧公開がおくれている。是非ともその神髄に触れたいものである。
 東ベルリンのシュプレー川が分岐するあたりにできた美術館島と呼ばれるゾーンには多くの美術館が密集している。東独の現代作品の展示もあったが、リアリズム、印象派、表現主義、シュールレアリズム…などのスタイルのうえではクラシックモダンどまりの作品群で、戦後の美術の動向がほとんど反映されず、時の停滞と体制の差を感じるのである。


パックス・ゲルマニカ
 ドイツ統一=圧倒的経済力=マルクの支配という図式で強大ドイツが動き出した。しかし統一前に西独の3分の1とされた東独の生産性は落ちつづけ、現在4分の1しかなく、工場閉鎖と失業の続出である。
 西独の一級市民、東独の二級市民、裕福と困窮、発展と凋落、成功者と失敗者、日の当たる市民と独裁下の市民、統一後のドイツには問題山積である。しかし経済巨人の丸抱えで「東ドイツがポルシェに乗って西へ行く」と東欧諸国から冷やかされながら、やはり「21世紀はパックス・ゲルマニカ(ドイツの時代)」を予感するのである。



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2012年10月5日金曜日

調達物流で輸送システム化


昭和62年(1987年) 10月5日 月曜日


 鳴り物入りの「秋の全国交通安全運動」も終った。全国の運転免許所有者五千五百万人、自動車保有台数五千万台、本格的車社会である。
 従来の取締りや、安全施設の整備、運転技術の向上などだけでは交通事故は減らない。

「まあええ」は「迷惑」でっせその駐車
 大阪市内の瞬間駐車台数は二十一万台、府下全域での年間駐車違反件数二十七万台である。経済活動の拡大とともに、当然、物の動きは活発になる。やたらと荷物、人を乗せ、トラック、乗用車、単車が街中を走り廻る。いきおい駐車違反が増加し、狭い道路をより不便にしている。一台が違法駐車すれば、「赤信号みんなで渡ればこわくない」式の車の続出で、手のつけようがない。
 そこで、「違法路上駐車を追放しよう」と立ち上がったのが、東区松屋町周辺の九町会で、地区内の全車両にコード表示したステッカーを貼付するというユニークなもの。各町会担当者が車両台帳をもち、違法駐車を見つけ次第報告する。他地域からの進入車も同様巡回警告する自主的な地区内の駐車管理を行うもの。大阪は安全マインドが不足、交通マナーが低い、といわれる中にあって新手の防衛策といえる。

四兆円の損失
 都心をはじめ、日本の道路は色々な障害があって車がスムーズに走れない。
 自動車の全国平均時速は時速三十六キロで年間総走行時間は百四十億時間。一台、一時間当りで人件費など三千円の費用がかかるとして、年間総費用は四十二兆円に達すると試算されている。平均走行速度が四十キロにアップすると、総走行時間が一割減るため、年間四兆円の費用が浮くという。新関西国際空港四つ分のお金に相当する。
 安全、安心、快適の三側面から道路の質を検討し、バイパス、立体交差化、道路照明、駐車場の整備などにより、渋滞が解消すれば、大きな経済インパクトがあるのである。

調達物流の総合メリット
 「五・十払い」の集金用車両。問屋街の配送車など問題は多いが、向上でも納入資材、製品出荷の^車両でごった返ししている。その中にあって、各協力工場から、それぞれのトラックでの納入形態をやめ、定時定量を一台の車が巡回集荷し、直接工場にコンベアの端末に納入する「調達物流」を考えついた。摂津市のタイヨー運輸はさらに拡大して、顧客のニーズに合わせ、配送センターで、部品の組立(ユニット化)などで総合的付加価値を高めている。この様に多品種小ロットの各協力工場からの納入車の無駄が省け、得意先は業者の車で混雑することなく、相方共トータルコストを下げることが出来たのである。
 輸送が単に物の場所を移すことから、物流による価値の創造を目ざすと共に、地域エゴ、ドライバーエゴ、会社エゴを捨てさり、輸送をシステムとして考え、「機能の衣がえ」をしてゆく必要があるのではなかろうか。
北浦慎三