2012年8月23日木曜日

「殿様商売」から「共感販売」時代へ

1983年(昭和58年) 10月24日(月曜日)

秋の深まりと共に、国際デザインフェスティバル、フォーラム・イン大阪、テクノオオサカ、などのエベントで"大阪築城400年まつり"は、いま最高潮である。

先日リコーの浜田社長にお会いし、こんなお話をお聞きした。「あるお客さまから"リコーもにもゼロックスがあったのですか"と言われてがっかりしましたよ……」と言うことであった。リコピーが湿式コピーの代表で、ゼロックスが乾式コピーの代名詞になってしまっているのである
。

元来商標として登録され、それが全く一般名詞のように身近に使われているものに、セロテープ、サランラップ、サークライン、キャラバンシューズ、ニクロム、テープコーダー、デコラ、ホッチキス、プラモデル、ポラロイド、ボンド、シャープペンシル、マジックインキ、バーバリー、アスピリン、メンソレータム、ヒロポン、コークからカップヌードルまで実にたくさんある。もし商標のアクアラングを「水中呼吸装置」と言い直したり、タッパーウェアを「食品保存用ポリエチレン製容器」などと書くと、全く違ったニュアンスに感じるほど、愛着を覚えているものである。

会社には、経営理念、企業行動についでこれらの顔とも言える企業表情があるはずだ。消費者やユーザーに知られ、可愛がられ、覚えられる商品名や会社名が浸透し、それが根回し力となり、企業の主体性を培ってゆくのである。

さらのその影響力が、その地に大きく根づくにつれ、日立市、豊田市、キヤノン通り、東洋大橋(広島)など、市や町や通りに顔をのぞかせる。まさに「企業城下町」なのである。単に良いものを安くつくることから、よく知ってもらい、共感を得て、買ってもらう時代になっている。「殿様商売」から「共感販売」の時代へと大きく変化をとげているこの時に、今一度自社の存在理由を問う必要があるのではなかろうか。
(慎三)

2012年8月14日火曜日

楽しい「社内ギネスブック」

1983年(昭和58年) 9月26日(月曜日)

厳しい残暑も終わり、やっと秋らしい気候になって来た。すこし旧聞に属するが、ある工場長がやって来て、「数日前から夜勤者が働いているにもかかわらず、泥棒が入り、ロッカーを荒らされた。昨夜仕かけをして、やっと泥棒を取りおさえた」との報告であった。

同日夕刊の社会面トップ記事に"ロボット会社のロボットが泥棒をつかまえた"と大げさに報道された。これは被害にあった工場のリーダーが、何とか工夫をこらしてつかまえようと、自宅から持ち込んだ道具立てで、回路を組み、見事逮捕ということになった。

当人は直接ロボット製作にたずさわっていた訳ではないが、常に創意工夫に留意し、今回の執念の細工で、泥棒逮捕のヒーローとなったのである。

我社では数年前から「社内ギネスブック」を設けている。たわいもないことだが、社員のコミュニケーションと楽しい建設的競争心を盛り上げようと、試みに始めたのである。カレーの早食い、大声、背筋力、背走、シリンダーの早組みから、スマイルNo1(美人No1ではない)に至るまで、仕事に関係のないものも含め、大いに受けている。

運動会シーズン、体力と技を競うのもよいが、カラオケ、司会のうまい者、キャンプ指導のベテラン、祭太鼓を打てばピカ一、落語が出来る、写真、セールス競争、改善提案No1、とたくさんある。それぞれの特性、努力を皆に知らせる、まさに「叱責より賞揚」の効用が如実に立証されるものである。

また、それらの特技、趣味を社内文化体育活動で大いに生かすもの、仕事に直接反映するもの、「彼にそんな隠し芸が……」と上司から見直されるもの、ヒーローもまた色々である。

もちろん、「スーパーヒーロー」は社長であるが、このような各部門、各分野の「ミニヒーロー」がどんどん出現してはどうか。ギスギスした仕事の中だからこそ、豊かなたのもしいヒーローを待ち望むものである。
(慎三)

2012年8月9日木曜日

活力生む根源は人の組み合わせ

1983年(昭和58年) 8月29日 (月曜日)

先月、第七番目の工場が奈良にできた。薬師寺に近い環境抜群、交通至便の地である。現地の別法人であり、旧来からの社員と、本社から移籍したものとは経歴、育ち、技量、年齢や、それぞれ集団の理念、仕事の手順など異なるものである。幸い旧社員、移籍社員の間に何のトラブルもなくスムーズに新しいチームワークが出来たのはあり難いことである。

三年計画で社内にブラスバンドを育てようと思いつき、今年その第一陣が、吹奏楽日本一となった淀川高校から入社した。お盆の「社内納涼大会」、ビア・パーティーの時に、たった五人の小編成ながら演奏会を開いた。トランペット、トロンボーン、フルート、ホルン、ユーホニウムと、息の合った、金管楽器のみのクィンテット(五重奏)のハーモニーの美しさに酔った。

人それぞれの持ち味、能力をうまく合わせ、組織化するには、その感情や意思を大切にしなければならない。くせ、短所は裏返せば長所と言えるのである。組織活力を生み出す根源は人間同士の組み合わせであり、その組み合わせは性格、学歴、年齢、文科系、理科系、はては血液型にいたるまで、その多様さがやる気と共に妙味を発揮するので有る。

なかんずく上に立つものが、万事に「気くばり」をして、部下の心をつかむことである。うまく行かない時は、責任転嫁したり、環境のせいにせず、自らの人格、ネットワーク力、影響力の不足と自戒すべきである。

法隆寺の棟梁であり、最近薬師寺の金堂、西塔、東塔を建立した西岡常一氏からお聞きした「法隆寺大工に伝わる口伝」に

 搭組みは 木組み
 木組みは きのくせ組み
 木のくせ組みは 人の心組み
 人の心組みは 棟梁の工人への思いやり
 工人の非を責めず、己の不徳を思え

というのがある、課内、部門内、会社の活性化のため、もう一度心くばりをしてみたいものである。

(慎三)

参考