2012年9月25日火曜日

世界の街角で4 オスロ 「北欧のロダン」ビーゲラン


デンマーク、スウェーデン、ノルウェーなど北欧のスカンジナビア諸国は、白夜とフィヨルドの美しい国というイメージが強烈である。しかし長い冬の自然は厳しく、日照時間の短い日々である。

短い夏の長い白夜
 太陽は赤道直下の東南アジアやオセアニア、アフリカでは大地や人々を焼き焦がす「悪魔」でる。しかし陽射しの少ない北欧では、太陽こそ「光と熱の恵みの神」である。
 特にノルウェーは国土の3%しか耕地面積がなく、北部では不毛のツンドラ地帯が広がる。しかし人々は国土を呪ってはいない。短い夏の間に燦々と降り注ぐ日光を素肌にせいいっぱい吸収している風景が街のあちこちで見られる。
 夏至(六月二十二日前後)を中心に夏至祭(MID SUMMER FESTIVAL)が開かれ、人々は短い夏の長い白夜を楽しむ。日の出は三時五十分、日没は二十二時四十五分五時間ほどの夜である。

感動の彫刻公園
 ノルウェーの芸術家ですぐ頭に浮かぶのは、劇作家のイプセン、音楽家のグリーク、画家のムンク、それに彫刻家のビーゲラン(GUSTAV VIGELAND 一八六九~一九四三年)である。
 オスロの町はずれ、フログネル公園はビーゲランのために市が32万平方メートルの広大な敷地を提供、それを彼自身がレイアウトし、半生を捧げて彫刻群のひな型を制作、彫り上げた。作品数百九十二点一大彫刻庭園として市民に残したものである。
 彫刻はブロンズ、御影石、鋳鉄製とさまざまだが、テーマは「人間の一生」に絞っている。刻まれた六百五十人もの人々が死を迎えるまでの「生の一瞬」。思案、歓喜、絶望、怒り、そして孤独と葛藤、あらゆる人生の場面を現代の我々に訴え、メッセージを送る。じっと彫刻の前に佇む時、自己との対決にひしひしと感動が伝わって来るのである。
 地団駄を踏み、泣きわめく元気な子供などを題材とした五十八のブロンズ像で飾られた橋。六人の男が身を屈めながら水盤を支える「人の一生を問いかける噴水」。そして中央に一本の石柱が高くそびえ、百二十一人の老若男女の姿態が御影石に刻み込まれている。
 支え合い、からみ合い、折り重なり、押しのけ合っている姿はまさに人の一生の凝縮された姿そのもので、北欧の夏の、日の光と影のコントラストと共に強い印象と感銘を受けたのである。

小国ながら文化大国
 フログネル公園の南側に、オスロ市がビーゲランのために建てた住居兼アトリエがあり、現在博物館として公開されている。彫刻家は市の援助により制作に没頭でき、彫刻庭園を市に寄贈することになった。こうした知的空間の演出などが感動と潤いの溢れた公園を創り上げたわけだし、小国ながら文化大国といえる所以である。
 今日本の企業、自治体が「文化」づき美術館を続々オープンする一方、世界の美術界が「奇怪」と、まゆをひそめるほどの美術投機市場が我が国で膨らんでいる。“文化滞国”を戒めたいものである。

2012年9月21日金曜日

中小企業こそ「リスク管理」

昭和62年(1987年) 9月5日 (土曜日)



夏休み明け、グループ企業の責任者が、駆け込んで来た。取引先の倒産で、「三千万円の債権が、回収不能、一ヶ月の売上高に相当する」と青くなっている。景気回復期こそ、倒産多発の危険信号である。

災害は忘れた頃に
チェルノブイリ原発事故、三井物産マニラ支店長誘拐事件、三菱銀行三億円強盗事件、西川ふとん事件、そして古くはグリコ森永事件と、ふりかえってみると国も企業も家庭も個人も、様々な事故や事件に遭遇している。台風、雷、地震、豪雨、異常気象などの自然系リスク。盗難、侵入、デマ、パニック、スキャンダル、殺人、心臓病などの人間系リスク。火事、爆発、自動車、海運、航空機事故、公害、労働災害、製品欠陥、コンピュータ犯罪などの人工系リスク。これらを経営要素(人、物、金、情報、戦略)毎に分類してみると百近いアイテムが集まった。我々はリスクの渦中にあり、まさに「危機の時代」に立たされている。諸々の事故を対岸の火災化し、「喉元すぎれば熱さを忘れる」でいいのか、「災害は忘れた頃にやって来る」のである。

リスクの9割は人災
リスクの大部分はヒューマンエラーから生ずる。「人間は失敗をおかす動物である」しかしそのトリガー(引き金)を引かさないために、リスクマネージメント(危機管理)が必要である。リスク管理の最重要課題は倒産と社内犯罪(詐欺、横領、使い込み、持ち逃げ、中傷、誤報など)である。一方消費者から企業が訴えられるケースも多い。即ちPL(製造物賠償責任)とD&OL(重役責任)である。アメリカでは保険危機をひき起こし、PL保険など5・6倍のプレミアムである。

危機回避のシステム
大阪府経営合理化協会では「異業種経営者異脳専門家交流会」の中にリスクマネージメント専門委員会を設け、今年は「リスク管理」ハンドブックのパートⅠとして「倒産」を取り上げている。AI(人工知能)による「エキスパートシステム」(日本生命)や、倒産分岐点活用法などいろいろあるが、このハンドブックでは、中小企業向けの、チェックシート中心の簡便な、診断と対策表でまとめ、会員企業に役立ててもらいたいといっている。これで予兆を知り、予防保全策を打つべきである。

目指せ「リスキアン」
リスク管理とは「経営体の諸活動に及ぼすリスクの悪影響から、最小のコストで、資産、活動、稼働力を保護するため、必要な機能ならびに技法を計画、組織化、スタッフ化、指揮化、統制化するプロセスである」といわれている。アメリカでは七千人からなるリスクマネージャーの団体もある。日本では「水と安全はただ」という安易さから、活動は未だ低調である。
しかしリスクを未然に防ぎ、もし事件や事故が発生した場合、少ない費用で、最も効率よく処置する「リスキアン」(危機管理者をこう呼びたい)がいれば、企業の成長、繁栄のサバイバルに、的確に対処してゆくことが出来るのである。
北浦慎三

2012年9月20日木曜日

世界の街角で3 中国少林寺



中国を初めて訪問して以来、四半世紀以上経った。海外旅行最初の国が中国だったせいか、漢文、漢詩で旧制中学時代鍛えられたせいか、いずれにしても「中国大好きおじさん」である。

あばれ竜「黄河」
 古代文明発祥の地、黄河は世界第四の大河である。三月には大陸からの季節風に乗って黄砂(LOSS)がはるばる日本列島に降りそそぐ、「三寒四温」の言葉通り黄河の上流もすっかり春であった。
 南船北馬とはよく言ったもので華南の揚子江流域は、今も船便が発達し、華北の黄河流域は「あばれ竜」の名の通り、治水に悩み、時には流れを変える黄河をあてにせず、鉄道、自動車、そして今でも馬車が主要交通手段である。
 日本文化の源は中国である。特に漢字は表意文字として、一字一字固有の意味をもっている。日本の当用漢字は約三千字だが、中国古来の漢字は約五万字である。勿論今は簡略文字が主流をしめ、画数の多い漢字の冠や偏をとったり行書、草書から略字化したりで難読である。
中国ではどんな地方へ行っても書家、墨絵画家が幅をきかせている。そして軸の文字はすべて伝統的漢字で書かれている。社会主義国家の中央統制教育も「書」に関する限り芸術として認められ、統制外なのであろう。
 また文房四宝といわれる硯、墨、筆、紙は文房具中四つの宝として各所で売られ、日本へのみやげとしては特に珍重されている。

少林寺拳法の源
 香川県多度津にある少林寺本山の正月鏡開きに招かれ、少林寺拳法の神髄に接したことがある。以来一度中国華南省の嵩山少林寺を訪れたいと思っていたが、その願いがかなった。
 約千四百年前、当時の首都洛陽近くの嵩山少林寺に住した天竺僧菩提達磨が霊肉一如の実在である人間の本体を究め、霊のすみかである肉体を調御して、病まず屈せずの金剛身を錬成させるため編み出した拳法である。拳禅一如の修行に励む者は日本だけでも四十万人といわれている。

墨絵の為書
 嵩山少林寺では我々のために、きびきびとした激しい拳法の模範演技を見せてくれた。
寺内の売店では僧の描いた拳法のダイナミックな墨絵が数多く売られている。友人の旭電機の鬼束社長は少林寺拳法の顧問である。何かいい記念品をと思っていたが、私よりの送り主の名前と、鬼束社長への「為書」を記してもらうよう、絵書きの僧に依頼した。快くその意を解して墨書してくれた。
 帰国後早速差し上げたが、その躍動的な絵と共に、わざわざ自分の名前を為書してあることに大変喜ばれ、送った側も、予想外の感激であった。それにしても中国人は貧しいながらも書をたしなみ、絵を愛し、豊かな感性をもった人々が多い。そして中国人はみんな書家、墨絵画家のように思えるのである。