あばれ竜「黄河」
古代文明発祥の地、黄河は世界第四の大河である。三月には大陸からの季節風に乗って黄砂(LOSS)がはるばる日本列島に降りそそぐ、「三寒四温」の言葉通り黄河の上流もすっかり春であった。
南船北馬とはよく言ったもので華南の揚子江流域は、今も船便が発達し、華北の黄河流域は「あばれ竜」の名の通り、治水に悩み、時には流れを変える黄河をあてにせず、鉄道、自動車、そして今でも馬車が主要交通手段である。
日本文化の源は中国である。特に漢字は表意文字として、一字一字固有の意味をもっている。日本の当用漢字は約三千字だが、中国古来の漢字は約五万字である。勿論今は簡略文字が主流をしめ、画数の多い漢字の冠や偏をとったり行書、草書から略字化したりで難読である。
中国ではどんな地方へ行っても書家、墨絵画家が幅をきかせている。そして軸の文字はすべて伝統的漢字で書かれている。社会主義国家の中央統制教育も「書」に関する限り芸術として認められ、統制外なのであろう。
また文房四宝といわれる硯、墨、筆、紙は文房具中四つの宝として各所で売られ、日本へのみやげとしては特に珍重されている。
少林寺拳法の源
香川県多度津にある少林寺本山の正月鏡開きに招かれ、少林寺拳法の神髄に接したことがある。以来一度中国華南省の嵩山少林寺を訪れたいと思っていたが、その願いがかなった。
約千四百年前、当時の首都洛陽近くの嵩山少林寺に住した天竺僧菩提達磨が霊肉一如の実在である人間の本体を究め、霊のすみかである肉体を調御して、病まず屈せずの金剛身を錬成させるため編み出した拳法である。拳禅一如の修行に励む者は日本だけでも四十万人といわれている。
墨絵の為書
嵩山少林寺では我々のために、きびきびとした激しい拳法の模範演技を見せてくれた。
寺内の売店では僧の描いた拳法のダイナミックな墨絵が数多く売られている。友人の旭電機の鬼束社長は少林寺拳法の顧問である。何かいい記念品をと思っていたが、私よりの送り主の名前と、鬼束社長への「為書」を記してもらうよう、絵書きの僧に依頼した。快くその意を解して墨書してくれた。
帰国後早速差し上げたが、その躍動的な絵と共に、わざわざ自分の名前を為書してあることに大変喜ばれ、送った側も、予想外の感激であった。それにしても中国人は貧しいながらも書をたしなみ、絵を愛し、豊かな感性をもった人々が多い。そして中国人はみんな書家、墨絵画家のように思えるのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿