2012年9月21日金曜日

中小企業こそ「リスク管理」

昭和62年(1987年) 9月5日 (土曜日)



夏休み明け、グループ企業の責任者が、駆け込んで来た。取引先の倒産で、「三千万円の債権が、回収不能、一ヶ月の売上高に相当する」と青くなっている。景気回復期こそ、倒産多発の危険信号である。

災害は忘れた頃に
チェルノブイリ原発事故、三井物産マニラ支店長誘拐事件、三菱銀行三億円強盗事件、西川ふとん事件、そして古くはグリコ森永事件と、ふりかえってみると国も企業も家庭も個人も、様々な事故や事件に遭遇している。台風、雷、地震、豪雨、異常気象などの自然系リスク。盗難、侵入、デマ、パニック、スキャンダル、殺人、心臓病などの人間系リスク。火事、爆発、自動車、海運、航空機事故、公害、労働災害、製品欠陥、コンピュータ犯罪などの人工系リスク。これらを経営要素(人、物、金、情報、戦略)毎に分類してみると百近いアイテムが集まった。我々はリスクの渦中にあり、まさに「危機の時代」に立たされている。諸々の事故を対岸の火災化し、「喉元すぎれば熱さを忘れる」でいいのか、「災害は忘れた頃にやって来る」のである。

リスクの9割は人災
リスクの大部分はヒューマンエラーから生ずる。「人間は失敗をおかす動物である」しかしそのトリガー(引き金)を引かさないために、リスクマネージメント(危機管理)が必要である。リスク管理の最重要課題は倒産と社内犯罪(詐欺、横領、使い込み、持ち逃げ、中傷、誤報など)である。一方消費者から企業が訴えられるケースも多い。即ちPL(製造物賠償責任)とD&OL(重役責任)である。アメリカでは保険危機をひき起こし、PL保険など5・6倍のプレミアムである。

危機回避のシステム
大阪府経営合理化協会では「異業種経営者異脳専門家交流会」の中にリスクマネージメント専門委員会を設け、今年は「リスク管理」ハンドブックのパートⅠとして「倒産」を取り上げている。AI(人工知能)による「エキスパートシステム」(日本生命)や、倒産分岐点活用法などいろいろあるが、このハンドブックでは、中小企業向けの、チェックシート中心の簡便な、診断と対策表でまとめ、会員企業に役立ててもらいたいといっている。これで予兆を知り、予防保全策を打つべきである。

目指せ「リスキアン」
リスク管理とは「経営体の諸活動に及ぼすリスクの悪影響から、最小のコストで、資産、活動、稼働力を保護するため、必要な機能ならびに技法を計画、組織化、スタッフ化、指揮化、統制化するプロセスである」といわれている。アメリカでは七千人からなるリスクマネージャーの団体もある。日本では「水と安全はただ」という安易さから、活動は未だ低調である。
しかしリスクを未然に防ぎ、もし事件や事故が発生した場合、少ない費用で、最も効率よく処置する「リスキアン」(危機管理者をこう呼びたい)がいれば、企業の成長、繁栄のサバイバルに、的確に対処してゆくことが出来るのである。
北浦慎三

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