1983年(昭和58年) 11月28日(月曜日)
三十年前、友人と氷川丸に乗り、神戸、名古屋、横浜と豪華客船の旅を味わったことがある。その時、一等客室のアメリカ銀行の頭取にプロムナードデッキで聞いた話が思い出される。「バイスプレジデント(副社長だが実質支店長クラス)を任命する前に、ゴルフを共にし、パットの時間いかんで、決断力を見極める。奥さんとお会いして、主人への協力度を確認する」とのことであった。
ドライな業績主義の米国人でさえ「パットの決断力」とか「夫人の協力度」といった業績以外の人格的要素を昇進の条件にしているのである。
集団思考の強い日本の社会では、複雑多様な人間関係の良きさばき手が上司、上役の適格者ではなかろうか。我々は小さい時から人の和、素直な気持ち、気くばりの大切さを教えられ、グループ環境の中で、役割を十分果たす人間として育てられて来た。こうした日本社会の風土では、酒を飲んで上司の"悪口"に花をさかせることも、組織の連帯感を強めるために必要である。上司は、その辺を理解して活用するのが肝心だ。
山本五十六の言葉に「やってみせて、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば、人は動かじ」がある。いまでも名言だと思う。個人の活力が会社を押し上げ、また一方で会社という集団の力学が個人の能力、個性を大いに培ってゆくものだ。
(慎三)