毎日新聞 1981年(昭和56年)9月21日(月曜日)
ピ ン ク カ ラ ー と ス チ ー ル カ ラ ー
パートタイマーの職場進出は家庭的安定と新たな生きがいを求めてめざましいものがある。わが社のような産業用ロボットメーカーでも大歓迎である。娘時代の職場経験を生かす人、単なる主婦として社会的に取り残されたくないと、社会的意義を認識する婦人たち。この人たちが最近ホワイトカラーやブルーカラーに対して「ピンクカラー」と呼ばれ、職場の実戦力となっている。わが社では納涼大会の「ゆかたコンテスト」の審査員、TCR(原価低減運動)の発表者など、業務以外の活躍ぶりもいままでにない観点から実に新鮮であった。
それにひきかえ、過酷な労働、単純作業、悪環境労働からの解放。省力、品質安定などの生産性向上をねがって、多種少量生産や混流生産ラインの自動化に自由度の高い産業用ロボットが飛躍的な導入期に入っている。我々はこのロボットを「スチールカラー」と呼んでいる。十年程前には高価なばか者扱いされていたロボットが、いまでは日本が全世界の七割(約七万台)を独占生産し、三直労働に換算すると」二十万人以上の労働者に相当するロボットが昼夜働いていることになる。
一般的にはロボットは人間の代替物と考えられているが、単なるマニピュレーターから知能ロボットまで、その範囲は広い。簡単に言うと手をもった自動化機械と考えればよい。決められた作業を繰り返す「固定シーケンスロボット」から、作業手順を教え込むと記憶、演算し作業する「ティーチング・プレイバック・ロボット」。、感覚機能や認識機能を有し、自律的に行動する「知能ロボット」まである。
ロボットが単に生産現場で使用されるだけでなく、一次、三次産業での活用が望まれる。木材伐採ロボット、家畜解体ロボット、建築仮枠組み立てロボット、高圧線碍子清掃ロボット、身障者看護ロボットなど概念設計が既にされているのものがある。
OECDが最近、日本のロボット進出を経済摩擦に次ぐ経済侵略と恐れをなしていると聞く。愚かなことである。
究極、ロボットは人間の敵ではない。人間の偉大な補助者として使いこなすのもまた人間である。ロボットがロボットを作る時代になったとはいえ、しょせん人間が主人公である。
(慎三)
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