2009年3月25日水曜日

自分の“見え”を踏み台に飛躍を

毎日新聞 1981年(昭和56年)10月12日(月曜日)

自分の“見え”を踏み台に飛躍を

入社試験たけなわの今日このごろ、毎日が来春卒の学生との面接対応に追われる。最近の学生気質を三ム主義(無気力、無関心、無感動)とか三ズ主義(読まず、学ばず、考えず)とか評する向きもあり、何か平均的で特徴がない学生の多いのが気になる。

就職となると安定志向(官庁)など大手思考(大企業)をはじめ、長男なるが故に転勤をいやがり、対人折衝のわずらわしさからセールスを忌避する。

面接試験に自分の自覚する長所、短所を述べてもらう。長所で多いのは明朗、忍耐、社交的、積極的など。短所で多いのは短期、人付き合いが悪い、消極的などである。自分の性格は自分が一番良く知っていて、また一番わかっていないものである。

「私は口ベタで交渉事はダメで…」という学生が、質問外のことにもどんどん発言し、卒論の内容を黒板を使って上手に説明してゆく。意外と固定観念で自分をきめつけている者が多いのに気づく。
陽気といえば長所で、おてんばといえば短所となるように、陰気といえば短所だが、おしとやかといえば長所になる。グズ(短所)というより、慎重といえば長所となるものである。言葉だけの問題ではない。欠点は裏返せばその人の長所になりうるわけである。

「短所をためて長所を伸ばす」自他共に言えることである。叱責より賞揚が効果的であることも衆知のことである。

人間には自分をよく見せようとする見えがあるものである。この見えが自分を向上させるメカニズムとして働くといえる。人前で発表し、その発表に対して自 分を強制する有限実行型こそ向上心のあらわれである。個人法人を問わず、目標の設定と自助努力が前向きの姿勢なのである。

高跳びのバーは常に上げられてゆく。周囲がそれを見ている。今、それにチャレンジしてゆくのが真の向上心である。

(慎三)

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