1982年(昭和57年)7月12日(月曜日)
多様化社会ー価値観をしっかりと
産業スパイ事件が世間を騒がせている。もはや「原理はアメリカ、応用は日本」の時代は過ぎたといえる。日本固有の゛本物゛の先端的科学技術開発の開幕である。すでに技術輸出においても米、独と比肩されている。しかし、いまだ我が国が欧米から学ばねばならぬことは、山ほどある。さりとて、卑劣な手段で手に入れることも王道に反する。
個人主義思想の欧米の契約社会ー利益集団に比して、集団主義思想の日本の信頼社会ー協調集団の中では、えてしてオーバーリアクション(群れさわぎ行動)による瞬間的転換作用が起こりやすい。しかし、今や均一的、規格的、同質的社会から、複雑な個性的、多様化社会へと大きく価値観が変わりつつある。
「学ぶとはマネることから始まる」。生産技術、技術開発など現実的、実際的な改良、模倣の領域から、応用研究、基礎研究など未来的思考な比較的創造性の高い領域へと「学ぶ」レベルも上げて行くべきである。
戦前の「正邪善悪」の価値尺度から、戦後は「損得」、「好き嫌い」、「本物・偽善」と大きく変化している。また、東洋式(和風)、西洋式(洋風)の様に対立した価値観が併存している。それは和食・洋食、和服・洋服、日本建築・西洋建築、邦楽・洋楽、日本画・洋画、歌舞伎・オペラ、日舞・バレエから東洋思想・西洋思想、仏教・キリスト教など本質的な風土、民族、歴史の違いとして認識されている。
しかし、この和風、洋風の生活様式、文化、思想、宗教が日本では混然一体となって、同化し地肉となりつつあるのである。実は十分な判断力、鑑識眼、審美眼を持ちえないまま表面的理解に終始しているかもしれないのである。
創造性は多様な異質性の中から生まれるものである。生産性はこの創造性を高めることである。自らの価値観への尺度をしっかりもつべき時代である。
(慎三)
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