1982年(昭和57年)5月3日(月曜日)
「花と緑を愛する」気持ちこそ
緑が目にしみる季節となって来た。四季折々の風情が楽しめる日本の有り難さを改めて痛感する。桜花らんまんだった先月の風景は、すでに緑したたる新緑へと変貌をとげている。
最近、宇宙衛星が撮影した日本本土の赤外線写真をみた。東京、大阪などの大都市圏は枯渇した荒涼たる砂漠のような死の都会像であった。「工場緑化率」など企業の緑化運動がやかましくいわれるが、単に植物の代謝による空気の浄化作用、美観などの効用にとどまらない事が多い。
わが社では毎月十日を「緑の日」と定め、社長をはじめ全社員が定時終了後、除草、散水、施肥、害虫防除などの手入れを行っている。そこに草木を育てる気持ち(人材育成)、緑化による住みよい地域環境づくり(地域社会への貢献)などのために、額に汗することの有り難さがわかる。
また、やたらと入社記念、永年勤続表彰、周年記念、落成記念などの記念植樹を実施している。この因縁所生が、緑を愛する気持ちを育てるものである。゛子孫に美林を残す゛ではなかろうか。
ややもすると公共用地(堤防、道路、公園、広場など)はゴミの掃きだめ化傾向が強いが、会社の周辺公共用地こそわれわれの生活圏の一部と理解して、清掃奉仕、植樹に努めている。
緑化のための余裕スペースがない、人手がない、経費がかさむということで、不熱心な経営者を見受けるが、緑化どころではない、と看過しがちなこの緑化が、実は生産性向上と比例しているとさえも思えるのである。
「花と緑を愛する」気持ち、小さな生命をはぐくみ育てる心。これが事業百年の計に通じているものと思う。緑化は長期計画である。また植える時期を選ぶものである。せめて、小さな島国がGNP(国民総生産)世界第二位の経済大国にふさわしい、緑あふれる国土にするための、なお一層の企業努力をしたいものである。
(慎三)
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