1982年(昭和57年)9月13日(月曜日)
不況の中、東奔西走の毎日だが、よくタクシーを利用する。かつての神風タクシーは減ってきたが、ムッツリドライバーに乗り合わせると、変にものを言って、からまれないものかと気が滅入る。それに反し、クラウンタクシーに乗るとおしぼりが出、日本タクシーに乗ると運転手名入りのティッシュ・ペーパーが出ることで有名である。責任をもってお客さんを送りました、という印でもある。
この日タクでは、ガギグゲゴ社員(がめつい、義理を欠く、グチっぽい、元気がない、ごう慢)は班長にしない。幹部に向くのは、カキクケコ社員(感動する、記録する、苦労を共にする、健康に留意する、交際上手)だと酒井専務が言っておられる。運転手の教育、訓練の大切さがわかる。
十数年ぶりに金沢の機械メーカー、渋谷工業を訪れる。玄関を入るやいなや、全員が「いらっしゃいませ」の合唱である。前回訪問した時の驚きの再現である。渋谷社長は「手を止めてあいさつをしたのでは能率が下がるのでは」の問いに対し「むしろ心の生産性は上がっているはず」との答えに感服する。
一方、装粧品卸の「寺内」では、いまだに「ニコハイス」精神である。お客に呼ばれると、ニコッと笑って、ハイと返事をし、スッと飛んで行く、のである。気持ちのいい職場である。
最近、オアシス運動(おはよう、ありがとう、失礼、すみません)なる言葉を耳にする。いまさらながらという気もするが、身近な簡単なことが徹底して出来ていないのである。
貝印カミソリでは、毎日生産されるカミソリの「試行当番」がいる。試し剃りをして、その日の製品品質を身をもって確認することで、エンドユーザーに交換を持たれている。
仕事とはお客様にどうすれば喜ばれるかを考え、工夫し、行動することではなかろうか。
(慎三)