昭和62年(1987年) 2月5日 木曜日
「円高激震」下、厳冬の産業界である。その中にあって、今年もバレンタインデーがやって来る。二月十四日、キリスト教で、殉教した聖バレンタインの祭日。女性が男性に愛の告白ができる日とされている。6ケ。七ケ。九ケにプラス花二鉢と、三年連続上昇の私宛の「義理チョコ」も、プレゼントされて腹の立つものではない。心ひそかに期待に胸ふくらませ、こっそりと自分の机の引出しをあける楽しい日なのである。去年は、「部長」「課長」「係長」の表札ふうのチョコレートが良く売れたようである。「部下」の女子社員が「部長」と書いたチョコを課長の引出しに、しのばせる。翌日それを開いてニンマリする課長氏。その光景を遠目に、それとなく観察する当の贈り主たち。そこに男性の昇進願望とともに、女性社員とのほのぼのとしたコミュニケーションが窺える。
食品業界の売上げ総額二十七兆円、うち菓子業界二兆三千億円、うちチョコレート業界三千四百億円位とされている。この「バレンタイン歳時」の売上げは、年間販売高の10%以上で、日本人に直接関係のない宗教的行事のコマーシャリズムと一笑に付せない程のマーケットになっている。
OA、FA、SA、HA、と事務所、向上、商店、家庭にロボットが入り込んでゆく。しかし店員、販売面の自動化、ストアオートメーション(SA)については、機械、ロボットで代替できる部分は大いに導入するべきである。人間にしかできないふれあい、サービス、不測j事態の判断、意思決定のみを担当することにより、顧客への満足が増大するはずである。ハイテク時代こそ、よりハイ・ヒューマン・タッチが望まれるところである。
「ロボットが刻む愛の言葉」ともてはやされ、キャラクターチョコレートづくりに精出した「チョコロボ」が消費者の多様生産システムとして活躍している。「好きやねん」「私の愛うけとって」「パパ好きよ」「合格祈ってます」など、あらかじめティーチングしておいた十数種のーメッセージと、宛名、贈り主をハート型のチョコの上に、ロボットが黙々と書いてゆく。
食べるためのお菓子(ハードウェア)を送るだけではなく、心にふれる感性豊かなメッセージ(ソフトウェア)をプレゼントする時代である。二億六千万円と昨年のチョコ売上日本一を記録したキタの阪神百貨店の売り場の話では、チョコの種類は三千種、食べてもらうのは半分位で、情報伝達に価値があるといっている。
殆どのロボットが、そうであるように、発売当初から三分の一位に価格が引き下げられている。ロボット単体の導入から、タンク、圧送ポンプ、保温装置、データ入力装置などの周辺装置をすべてセットし、応用ソフトつきの一貫した装置として、ユーザーニーズに対応している。個性化、ソフト化時代の小売り、店頭の自動化、消費者と「プッツン」ではなく、マン・マシンに心を交わし合うメッセージであってほしいものである。
(太陽鉄工常務・日本産業用ロボット工業会関西支部長)
北浦慎三
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