昭和62年(1987)年 8月5日 水曜日
吹田の中小企業の(株)旭電機製作所は電子機器メーカーだが、最近商品化戦略の多角化の一環として、台湾から幼児用モトクロス型自転車を輸入した。国産品に比べ半値という安さもあって、すでに三千台以上を売りさばいている。川鉄商事が韓国製の木工家具を、いすずがトラック用バッテリーを、トヨタ車体が台湾からプレス部品を購入、などの報道は枚挙にいとまがない。
NICSから「開発輸入」
円高、貿易摩擦、それに伴う政府の輸入促進策を背景に百貨店、スーパーなど流通業界でアジアNICS(新工業国群)からの直接輸入(開発輸入)が増えている。海外商品共同仕入れ会社「アイク」や、タイ製の商品を扱う専門店「タイホニック・タイランド」(そごう系全国十三店)などアジアで“ヒット商品”探しに懸命である。日本人の胴長短足の体型、甲高、幅広の足型、色、柄等の好みなど、「日本向けはめんどうだ」と、敬遠したり、日本を特殊な市場とする見方も根強い。それが「非関税障壁」とも受取られかねない。しかし、手間をかける日本製の良さがようやく理解され、「日本の業者と付き合うことで、商品開発のノウハウを吸収し、力をつけた」と喜んでいる向きも多い。
相互補完の輸入戦略
地域的に見ると、アメリカ/中南米、欧州/中近東アフリカ、日本/東南アジアがその地域特性から来る相互補完関係。産業特性、技術特性を生かした分業体制が今後のグローバリゼーション(世界化)に非常に重要である。日本とNICS(韓国、台湾、ホンコン、シンガポール)、ASEAN-4(フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア)は先進国、中進国、途上国という風に雁行的経済発展をとげて来た。それはハード面では、繊維、軽工業品→鉄工、造船→自動車、電子機器とグレードアップし、日本を追い上げ、遂にライバル視するのである。一方ソフト面では東南アジアの言語圏、文化圏から来る、ソフトの文化性、例えばワープロの漢字など、域内では普遍性、共通性があり、有利に相互補完の実をあげることができる。
ローカルから国際ルールへ
特許、商標などの知的所有権保護の強化が叫ばれている。模倣による技術習得というNICSの過去のパターンから、独自の創造性豊かな商品開発が望まれる。国内のローカルルールから、いち早く国際的尺度、規範で物事を判断すべきである。もはや、半導体、ファッション製品をはじめ単なる「国産品」ではダメで、真に世界に通用し、探し求められる「国際品」でなければならない。又アジアNICSが、ただ日本企業の垂直下請的、部品の供給基地化したり、地場産業による軽工業性雑貨製品の輸出に終始することなく、水平的補完契約の立場で、良きパートナーとしての務めを果す必要がある。今まで、二国間での競争や協調関係中心だったが、いよいよ両国企業が協力して第三国で新しいビジネスを始める時代が到来したのである。
北浦慎三
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