2012年9月7日金曜日

ストレス社会こそ「ゆとりの構造」


昭和62年(1987年) 5月5日 火曜日



 春のゴールデンウィークの連休明けである。陽焼けした若者たちの歓声があちらこちで聞こえる。

小型、こま切れ的レジャー
 余暇開発センターの「レジャー白書」によれば、男性の場合、今後やってみたい余暇活動の第一位は避暑、避寒、温泉などの国内観光で、七三%。第二位がドライブ五四%、第三位外食五〇%、第四位海外旅行四八%、である。しかし「時間的余裕がない」(四〇%)や「経済的余裕がない」(二五%)で、宿泊観光旅行に行けなかった理由としている。
 中小企業の福利厚生施策の中で、断然人気の高いのが、この旅行で、他のレジャーを圧倒している。ところで、日本人のレジャー活動は小型、こま切れ的で、多彩と言えるが、欧米に比して、日常的、都会的である。観光レジャーにも共通しており、最近はゴルフ、テニス、スキー客が増えているが、遊びそのものに余裕がなさすぎる感がある。

余暇にも生産性?
 働きバチ、ワーカーホリック(仕事中毒)と海外から日本のビジネスマンは避難されながらも、ゴールデンウィーク、夏休み、正月はまさに“民族大移動”の旅行の集中するシーズンである。欧米では長期休暇は常識化している。バケーション、即ち頭をベーカント(空っぽ)にして、短くて一週間、長くなると一ヶ月滞在の、滞在型リゾートが定着している。交替で休暇を取ることを法制化している国さえある。日本では人が働いている時に、自分だけ休暇をとること罪悪視し、レジャーを浪費ときめつけ、上司、同僚、部下に気を配りながら、遠慮して休暇を取らないのである。総じて「レジャー下手」「遊び下手」である。民族性の違いとはいえ、明日の英気を養うという点では、レジャーにも生産性があるといえるのではなかろうか。

ストレス社会 心はプアー
 全民労協の調査では、毎日の仕事の中で、「精神的にきつい」「運動、レクリエーションのゆとりがない」につづいて「人間関係からくるストレス」をあげている。体をあまり動かさず、頭だけを使うことが多く、そのうえ、食べ物豊富で、過食。成人病の増加が問題である。自覚症状がありながら、責任感と「出世の妨げ」と、自ら病気をひた隠しにして、無理をし、結果として、会社に迷惑をかけることに相成るのである。
 仕事不安(失業や職場への不適応)、家庭不安(子供の非行や進学難)、地域不安(近所に知らない人が増える)、健康不安など基本的な不安は各世代でかなり共通しているが、二十代は仲間集団内の人間関係に生き甲斐を求めながらも、人間関係の不安で苦慮しているのが目立つのである。ハードウェア即ち機械、設備たいかに立派でも、それを運転するソフト即ち管理、運営が貧弱ではダメである。そんな状態を「ハードリッチ ソフトプアー」と呼んでいる。「物はリッチでもストレス社会で、心はプアー」という感を深くするのである。そんな激変環境にこそ、余暇を見出す「ゆとりの構造」が余計に必要と思われる。
北浦慎三

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