2012年9月10日月曜日

世界の街角で1 「カレル橋の画家」

チェコスロバキア共和国といえば、自動車のシュコダ(Skoda)、プルゼニュ(Plzen)のビール、ボヘミアのガラス器が知られている。又、作曲家のドボルザークやスメタナを生んだ音楽の国である。初めて訪れた首都プラハは中部ヨーロッパ最古の都市の一つであり、九世紀から分化の中心地であった。現在も市の中心部には、十一~十三世紀のロマネスク建築、十三~十五世紀のゴシック建築、十六世紀のルネサンス建築とあらゆる建築の見本が見られ、建築芸術の博物館といえるような町で、市内には五百以上の尖塔が見られる。

又、美術では世界で有名なプラハ国立美術館があり、フランス美術部では、ルソー、マネ、モネ、ゴッホ、セザンヌ、ピサロ、ピカソ、ブラック、シャガールの力作があり、西欧古美術収集部ではブルーゲル、デューラー、レンブラント、ルーベンス、ゴヤなど著名な作品が目をひく。

“中世の宝石”と言われ、中世以来のたたずまいを今日に残しているプラハには画家たちの群がるカレル橋(Karluv most)という美しい有名な橋がある。ブルタバ川(モルダウ川)に架かる五百米の石橋は中欧で最古のもので、一三五七年教会建築家ペトル・パルレージの作品である。橋の両端にはゴシック様式の門がつき、橋の両側の欄干には、聖書に題材を求めた彫刻が十五体ずつ、計三十体飾られている。夕陽にシルエットとなって浮かび上がる景色はプラハで最も美しいパノラマである。

春の陽射しをあび、旧市外とプラハ城を行き来する通行人は絶えることなく、カレル橋は常に賑わっている。油絵、水彩画、似顔絵、ハサミによる影絵と、画家達が何十人と製作を楽しんでいる。カレル橋の聖者像を一通り鑑賞した私も、つい好きな絵に見入っていた。私が「今かいている聖者は何というの」“聖ルイトガルダと聖アダルベルトさ”「よく描けている…ハウマッチ」“日本円で三万円”・ポケットからお札を取り出し、「一万円しか持ち合わせていない、これでどうだ……」“NO”ネゴは失敗である。「仕方ない散歩して来るよ。」橋上では何組かのバンドが色んな音楽を奏でている、それに耳を傾けながらカレル橋を前景にプラハ城を眺めていると、カレル橋を舞台にした大ページェントである。

一巡して再び画家の前を通ると、“描き上げたよ、完成だ。遠い日本から来たんだね…一万円でOKだ…”交渉成立である。画家の名はクリスト・ゲルゴフ(CHRISTO GERGOV)個展用の自画像ポスターもくれた。横にいた弟子のユーゴー人が“彼は新進作家で有名な画家だ”といいながら、未だ濡れているキャンパスを段ボールで絵具がつかないようにパッケージしてくれた。力づよいタッチの風景画を手にし、満たされた一刻であった。

東欧の社会主義は音を立てて崩壊した。バーツラフ広場の国民博物館の前を通りかかると、折から東京の「わだち合唱団」とチェコの「CKD合唱団」の共演で「春のうららの隅田川…」が流れて来た、まさに新鮮な驚きである。長い圧制下のプラハにほんとの春がやって来たのである。

大阪商工会議所 異業種交流研究会
コーディネーター 北浦 慎三











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カレル橋の画像(Google画像検索結果)

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