デンマーク、スウェーデン、ノルウェーなど北欧のスカンジナビア諸国は、白夜とフィヨルドの美しい国というイメージが強烈である。しかし長い冬の自然は厳しく、日照時間の短い日々である。
短い夏の長い白夜
太陽は赤道直下の東南アジアやオセアニア、アフリカでは大地や人々を焼き焦がす「悪魔」でる。しかし陽射しの少ない北欧では、太陽こそ「光と熱の恵みの神」である。
特にノルウェーは国土の3%しか耕地面積がなく、北部では不毛のツンドラ地帯が広がる。しかし人々は国土を呪ってはいない。短い夏の間に燦々と降り注ぐ日光を素肌にせいいっぱい吸収している風景が街のあちこちで見られる。
夏至(六月二十二日前後)を中心に夏至祭(MID SUMMER FESTIVAL)が開かれ、人々は短い夏の長い白夜を楽しむ。日の出は三時五十分、日没は二十二時四十五分五時間ほどの夜である。
感動の彫刻公園
オスロの町はずれ、フログネル公園はビーゲランのために市が32万平方メートルの広大な敷地を提供、それを彼自身がレイアウトし、半生を捧げて彫刻群のひな型を制作、彫り上げた。作品数百九十二点一大彫刻庭園として市民に残したものである。
彫刻はブロンズ、御影石、鋳鉄製とさまざまだが、テーマは「人間の一生」に絞っている。刻まれた六百五十人もの人々が死を迎えるまでの「生の一瞬」。思案、歓喜、絶望、怒り、そして孤独と葛藤、あらゆる人生の場面を現代の我々に訴え、メッセージを送る。じっと彫刻の前に佇む時、自己との対決にひしひしと感動が伝わって来るのである。
地団駄を踏み、泣きわめく元気な子供などを題材とした五十八のブロンズ像で飾られた橋。六人の男が身を屈めながら水盤を支える「人の一生を問いかける噴水」。そして中央に一本の石柱が高くそびえ、百二十一人の老若男女の姿態が御影石に刻み込まれている。
支え合い、からみ合い、折り重なり、押しのけ合っている姿はまさに人の一生の凝縮された姿そのもので、北欧の夏の、日の光と影のコントラストと共に強い印象と感銘を受けたのである。
小国ながら文化大国
フログネル公園の南側に、オスロ市がビーゲランのために建てた住居兼アトリエがあり、現在博物館として公開されている。彫刻家は市の援助により制作に没頭でき、彫刻庭園を市に寄贈することになった。こうした知的空間の演出などが感動と潤いの溢れた公園を創り上げたわけだし、小国ながら文化大国といえる所以である。
今日本の企業、自治体が「文化」づき美術館を続々オープンする一方、世界の美術界が「奇怪」と、まゆをひそめるほどの美術投機市場が我が国で膨らんでいる。“文化滞国”を戒めたいものである。